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世界の認知症メモリーウォーク

Purple Angelの認知症啓もうウォークに参加しました。

Purple Angelはイギリス発祥の認知症啓発団体で、創設者のノーマン・マクナマラ氏が自身の若年性アルツハイマー病の経験から立ち上げたものです。この団体は、認知症患者とその家族の生活向上を目指し、公共の場や企業で認知症に対する理解を促進しています。

さて、65歳以上の高齢化率が5~6%とまだ若いフィリピンで、認知症の啓発活動に関心を持つ人はどれほどいるでしょうか。

高齢化率が29%の日本では、認知症は多くの人にとって身近な問題ですが、フィリピンではまだそれほど関心が高くないのが現状でしょう。

それでも、このイベントのスポンサーであるエーザイは、5年10年後の未来を見据えて、積極的にフィリピンで認知症に関わるエコシステムの構築を進めています。

フィリピンはまだ若い国ですが、高齢者の数は急速に増加しており、2050年には高齢者が総人口の約16.5%を占めると予測されています。今のうちに認知症の啓発活動を広げておけば、将来、大きなリターンがあるかもしれません。

さらに、フィリピンはヘルスケアワーカーを多く輩出している国としても知られています。

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フィリピンの介護クラス

フィリピン人のヘルスケアワーカーに認知症ケアのスキルを持たせて世界に送り出すことで、世界の認知症啓発活動に貢献できる可能性があります。

私が目指す未来は、日本の優れた認知症ケアをフィリピン人ケアワーカーと共に、世界へ広げていくことです。

話を認知症啓発ウォークに戻します。

Purple Angelのカラーである紫色のTシャツを着て、参加者全員で写真撮影をしました。フィリピンの人々は本当に写真が大好きなので、それだけでもかなり盛り上がりました。

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まごのてグループも協賛企業です

その後、ダンスインストラクターによるズンバダンスで準備運動をしました。高齢者向けの優しいズンバを期待していましたが、かなり激しい動きで、案の定、高齢者はついていけていませんでした。

それでも、高齢者向けに動きを優しくすると若い参加者には物足りなくなるし、激しい方が勢いがあって良いですね。

日本だと高齢者に配慮しがちですが、フィリピンの若いエネルギーをそのまま発散することにも価値があり、そのおかげで私も若返った気になります。

みんなで歩くだけのイベントでしたが、とても楽しい時間を過ごせました。

5年、10年後にこの認知症啓発ウォークがどのように発展しているのか。そして、自分が世界の認知症ケアに、どのようなインパクトを残せているのかを想像する良い機会にもなりました。

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介護を使って外貨を稼ぐための第一歩

日本の介護を英語で教えていて、違和感のある単語が2つあります。「介護福祉士」「自立支援」です。

「自立支援」に関して言えば、ジリツの意味に「自立」と「自律」が含まれているため、自立を英訳した「Independence」だけだと、「自律」の意味が抜け落ちてしまいます。「Autonomy (自律)」の説明が必要です。
 
例えば、自立支援の文脈で、自己選択や自己決定を語るのであれば、「自立支援」の英訳は、「Self-independence support」ではなく、「Support for autonomy」の方が、すっきりと伝わります。
 
もし世界に向けて日本の介護をアピールするのであれば、「自立支援」のジリツは、英訳せず「JIRITSU」とローマ字表記の方が良いと思います。
 
Anime(アニメ)やKaizen(改善)のように、日本が誇る「自立支援」を、「JIRITSU SHIEN」として、グローバルでも通用するように、日本の介護を世界にプロデュースするんだ!という気概が、今後はますます重要になってくると思います。
 
そしてもう一つが「介護福祉士」です。「Certified Care Worker」として英訳されていますが、正直に申し上げて、この英訳で、世界中から優秀な介護留学生を集めようとしていること自体に、無理があります。
 
日本人であれば、国家資格を取得した「介護福祉士」と、初任者研修を終えた「初任者研修修了者」の違いは理解できるかもしれません。しかし、共に英訳すると、
 
 
「介護福祉士」→ 「Certified Care Worker」
「初任者研修修了者」→「Certified Initial Care Worker」
 
 
 
となり、大した違いが感じられません。
ちなみに、介護の入門資格である「初任者研修」は、130時間のコースを受講すればだれでも取得できます。
 
一方で、介護の最上位資格である「介護福祉士」は、450時間の実務者研修を受講し、さらに3年の実務経験(540日以上の現場経験)があって初めて受験資格が得られます。そして、国家資格に合格してはじめて、「介護福祉士」と名乗れるのです。
 
この違い、この重みが、「Certified Care Worker」からは全く感じられません。残念です。
 
「介護福祉士」といっても、ただの名称独占であり、無資格者でも介護ができるのだから、介護福祉士の英訳なんてどうでもいいじゃないかと思われるかもしれません。確かに、日本国内に留まっている限りではそうでしょう。
 
しかし、日本政府の戦略として、世界中から優秀な介護留学生を集めていくのであれば、介護福祉士の英訳にこだわらなくてはなりません。さらには、介護福祉士という資格を、世界で通用するブランドに育ていくべきです。今の時流を考えれば、それだけの価値がある資格です。
 
何度も申し上げているように、グローバルの視点で見れば、介護は医療のヒエラルキーの中で、最下層に位置します。したがって、Care Workerという名称だけでは、その価値が正しく伝わりません。
 
 
民間資格だろうが、国家資格だろうが、Care WorkerはCare Workerです。医師や看護師の指示のもと、患者さんや利用者さんの身の回りのお世話をするだけの仕事です。
 
しかし、日本の「介護福祉士」は、生活の専門職です。患者さんや利用者さんを取り巻く社会との関りについても専門性を発揮します。だから介護「福祉」士なのです。
 
 
さて、私が提案する「介護福祉士」のあるべき英訳は、「Registered Social Care Worker」です。
 
 
 
世界が日本の介護に一目を置いているのだから、正しくプロデュースして、介護を使って外貨を稼ぐべきです。そうすれば、必然的に優秀な介護留学生が日本に集まるでしょう。日本で稼ぐのではなく、日本の介護を使って、世界で稼ぐ道筋を見せるのです。そのための第一歩が、「介護福祉士」の英訳を、戦略的に考えることだと思います。

日本の認知症ケアがフィリピンの国家資格に加わる?

フィリピンから、介護の世界に新しい波が来ています。
 
出稼ぎで知られるこの国には、「NC2 Caregiving」という介護の国家資格が存在します。
これは、技術教育開発庁(TESDA)が提供するプログラムの一つで、海外で働くフィリピン人ケアワーカーのスキルと知識を国が保証するために設けられました。この点から見ても、ケアワーカーを海外に推し進めるのは、フィリピンの国家戦略の一環と言えるでしょう。
 
 
(フィリピン人ケアワーカーの教育風景)
 
さて、国家戦略として、フィリピン人ケアワーカーを海外市場に売り込むわけですが、民間資格だけでは信頼性が問われがちです。しかし、「NC2 Caregiving」は、フィリピン政府が背後にあるのですから、その資格の価値が格段に上がります。このように、国の後押しもあって、フィリピン人ケアワーカーは世界各地の介護・医療現場で活躍しています。
 
(フィリピン介護国家資格のカリキュラム内容)
 
ところで、TESDAが今、新たな動きを見せています。それは「NC2 Dementia Care(認知症ケアの国家資格)」の導入です。認知症ケアは、日本だけでなく世界的な課題になっています。TESDAはこの新しい資格を通じて、認知症ケアに特化した人材を育成し、世界に送り出そうとしているのです。
 
そんな中、予期せぬニュースが入ってきました。昨年から取り組んでいた「きらめき介護塾」の認知症紙芝居を、グローバルバージョンにリモデルした「Dementia Care Digital Kamishibai(認知症ケア デジタル紙芝居)」が、この新しい資格のカリキュラムに含まれるかもしれないというのです。
(認知症ケアデジタル紙芝居を使ったプレゼン@国際認知症ケア学会)
 
この話が進んでいたのは、私のフィリピン人パートナーが、認知症ケアアジアと共に、水面下でTESDAと交渉していたからです。TESDAも、日本の進んだ認知症ケアを取り入れることで、他国に対してもアピールできるし、日本の介護市場へのフィリピン人ケアワーカーの送り出しにも役立つと考えたのでしょう。
 
繰り返しになりますが、技術教育開発庁(TESDA)によって提供される資格認定プログラムは、海外にフィリピン人ワーカーを売り込むための品質保証です。したがって、資格と海外雇用がリンクしていなければ、TESDAが動き出すことはない、というのが私の見解です。
 
外国人ケアワーカーの受け入れを加速している日本の現状を鑑みても、Dementia Care Digital Kamishibai (認知症ケア デジタル紙芝居)がフィリピンの認知症ケアの国家資格のカリキュラムに加わることは十分にあり得ると思います。
 
彼らの話によると、2018年からこのプロジェクトは動いているようです。TESDAとの協議も、十分に重ねていることが分かりました。
 
もし、この話が実現すれば、フィリピン人ケアワーカーの背中に乗って、世界中に日本の認知症ケアを広げることができるかもしれません。まさに、たなぼた的な発想です。
 
こんな行き当たりばったりの展開ですが、0→1で何かを生み出す時というのは、たいていぐちゃぐちゃのカオスの中から、偶然と偶然がいくつか重なり合って、気がついたらカタチになっていたと気づくものです。なので、スマートではなくてもいいから、諦めずに前に推し進めることが大切だと思います。重要なのは、パッション(情熱)です。
 
現時点で、私が出る幕はほとんどないので静観しながらも、実現できるようにと天に祈っています。たなぼただろうが、他力本願だろうが、なんでもいいです。手段は問わず、日本の介護を世界に届けていきます。
 
(アジアの医療従事者向けに日本の認知症ケアをオンラインで指導)
福井のfacebook 福井淳一@海を渡った介護士 note

日本とフィリピンの元気の源の違い、ある貴婦人からの教え

断食道場で過ごした日々がフラッシュバックしました。

20代の時のことです。介護施設のお年寄りが入院すると、大体弱って施設に戻ってくるのを目の当たりにして、西洋医学に疑問を持つようになりました。そこから自分なりに東洋医学を勉強して、断食道場に行きつきました。

大分県にある断食道場
大分県にある断食道場

今でこそ、西洋医学も東洋医学も、どちらも大切だというのは理解しています。しかし、あの時は盲目的に東洋医学に突っ走っていましたね。そして、気が付いたら9日間の断食道場のプログラムに参加していました。29歳冬の出来事です。

断食道場での生活は割愛しますが、間違いなくヘルスリテラシー(自分の健康に責任を持ち、健康的な生活を送るために必要な能力)が向上したのは確かです。

さて、待ちに待った断食道場最終日のこと。道場特製のおじやが出されました。

最終日のメニュー、特製おじや
最終日のメニュー、特製おじや

さして太っていない私が、9日間の滞在で6-7キロ減量しています。意識は研ぎ澄まされているものの、身体は半病人状態です。胃の中はもちろん空っぽ。そんな状態で、おじやを一口、口に含み飲み込みました。その数秒後に、全身から力が湧いてきたのを今でも鮮明に覚えています。

嗚呼、人間は、食べたもので生かされているのだと、心の底から実感しました。

あれから15年経った先日のこと。3年ぶりにマニラにあるなじみの高齢者施設を訪問しました。フィリピン人ケアワーカーの面接のために来比された、施設長らご一行様と一緒です。

House of Somang マニラにある高齢者施設
House of Somang マニラにある高齢者施設

フィリピン人特有の明るさは、お年を召されていても健在です。その陽気な雰囲気に触発されたのか、日本からいらっしゃった施設長が、「みなさんはとても元気ですね、元気の秘訣は何ですか?」と質問されました。

私は、「いつも笑顔でいることです」とか、「些細なことでくよくよ悩まないことです」などの、回答を想像していました。すると、開口一番発せられた言葉は、

「エンシュア!!」

でした。医療・介護従事者であれば誰でも知っている、このエンシュア。食事をすることができない時に、栄養をバランスよく体内に補給する栄養剤のことです。

医療&介護従事者ならだれでも知っている、エンシュア
医療&介護従事者ならだれでも知っている、エンシュア

おそらくですが、この高齢者施設は、寄付金で成り立っているNGO法人であるため、経営が安定せず財政的に厳しいのでしょう。入居者は全て、家族から見捨てられたご老人たちです。

もちろん、入居者から入居費用はもらえません。国からのサポートもありません。パンデミック経て、財政的な厳しさは、さらに増しているのだと想像できます。

衣食住が当たり前の日本であれば、元気の源は、精神的な要素に帰結するのでしょうが、その前提がないフィリピンのNGOで成り立つこちらの高齢者施設では、元気の源は、栄養剤なのです。

「エンシュア」と大声で回答してくれたご婦人に、悲壮感は全くありません。さも当然であるかのように、笑顔で「エンシュア」と答えてくれました。

私は断食道場を経て、食べ物によって自らが生かされ、食べ物がエネルギーの源になっていることを十分に理解しているはずでした。にもかかわらず、そのことをすっかり忘れていたことに気づかされました。

「エンシュア」と答えてくれたご婦人に、無意識のうちに握手を求めていました。ついでに写真も一緒に撮りました。一時間程度の訪問でしたが、本当に大きな学びが得られました。

エンシュアと笑顔で答えてくれた〝貴婦人〟と一緒に
エンシュアと笑顔で答えてくれた〝貴婦人〟と一緒に
福井のfacebook 福井淳一@海を渡った介護士 note

日本の介護を高齢化が進むアジアに伝えるために~日本らしさを活かした紙芝居の魅力~

日本の介護を、これから高齢化が進むアジア諸国に伝えていく、1つの手段として、きらめき介護塾さんの、認知症紙芝居に注目しています。

認知症のことを医療用語やデータを用いて難しく伝える人はアジアにもたくさんいます。そんな中、お医者さんや看護師さんのような医療の専門職ではなく、普通の人にも分かりやすく伝えられるコンテンツはないだろうか。その上で、「日本らしさ」を加味したものであれば尚良しです。

そんな私の要望にぴったりな認知症のコンテンツが、きらめき介護塾さんの、認知症紙芝居なのです。

認知症の理解の紙芝居
認知症の理解の紙芝居

先日、国際認知症ケアのイベントで認知症紙芝居を披露したところ、さっそくマレーシアのお医者さんが認知症紙芝居のコンテンツを使いたい(学びたい)と、オファーが来ました。

マレーシアでも高齢化が徐々に進んできているようで、認知症の人を抱える家族に、わかりやすく認知症を伝える機会が増えてきたようです。

マレーシアのドクター
マレーシアのドクター

きらめき介護塾さんのオリジナルコンテンツの良さを残しつつ、日本国外でも使えるように、英訳&デジタル化に取り組んでいます。最近はChat GPTをはじめ便利なツールが増えて、作業が断然やり易くなりました。それだけ、日本の介護が届けやすくなりました。

英訳バージョン
英訳バージョン

外国人介護人材の育成と送り出しという、一方通行の国際化だけではなく、日本の介護を世界に届けるという双方向の介護の国際化に貢献できるように頑張ります!

福井のfacebook 福井淳一@海を渡った介護士 note