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介護を使って外貨を稼ぐための第一歩

日本の介護を英語で教えていて、違和感のある単語が2つあります。「介護福祉士」「自立支援」です。

「自立支援」に関して言えば、ジリツの意味に「自立」と「自律」が含まれているため、自立を英訳した「Independence」だけだと、「自律」の意味が抜け落ちてしまいます。「Autonomy (自律)」の説明が必要です。
 
例えば、自立支援の文脈で、自己選択や自己決定を語るのであれば、「自立支援」の英訳は、「Self-independence support」ではなく、「Support for autonomy」の方が、すっきりと伝わります。
 
もし世界に向けて日本の介護をアピールするのであれば、「自立支援」のジリツは、英訳せず「JIRITSU」とローマ字表記の方が良いと思います。
 
Anime(アニメ)やKaizen(改善)のように、日本が誇る「自立支援」を、「JIRITSU SHIEN」として、グローバルでも通用するように、日本の介護を世界にプロデュースするんだ!という気概が、今後はますます重要になってくると思います。
 
そしてもう一つが「介護福祉士」です。「Certified Care Worker」として英訳されていますが、正直に申し上げて、この英訳で、世界中から優秀な介護留学生を集めようとしていること自体に、無理があります。
 
日本人であれば、国家資格を取得した「介護福祉士」と、初任者研修を終えた「初任者研修修了者」の違いは理解できるかもしれません。しかし、共に英訳すると、
 
 
「介護福祉士」→ 「Certified Care Worker」
「初任者研修修了者」→「Certified Initial Care Worker」
 
 
 
となり、大した違いが感じられません。
ちなみに、介護の入門資格である「初任者研修」は、130時間のコースを受講すればだれでも取得できます。
 
一方で、介護の最上位資格である「介護福祉士」は、450時間の実務者研修を受講し、さらに3年の実務経験(540日以上の現場経験)があって初めて受験資格が得られます。そして、国家資格に合格してはじめて、「介護福祉士」と名乗れるのです。
 
この違い、この重みが、「Certified Care Worker」からは全く感じられません。残念です。
 
「介護福祉士」といっても、ただの名称独占であり、無資格者でも介護ができるのだから、介護福祉士の英訳なんてどうでもいいじゃないかと思われるかもしれません。確かに、日本国内に留まっている限りではそうでしょう。
 
しかし、日本政府の戦略として、世界中から優秀な介護留学生を集めていくのであれば、介護福祉士の英訳にこだわらなくてはなりません。さらには、介護福祉士という資格を、世界で通用するブランドに育ていくべきです。今の時流を考えれば、それだけの価値がある資格です。
 
何度も申し上げているように、グローバルの視点で見れば、介護は医療のヒエラルキーの中で、最下層に位置します。したがって、Care Workerという名称だけでは、その価値が正しく伝わりません。
 
 
民間資格だろうが、国家資格だろうが、Care WorkerはCare Workerです。医師や看護師の指示のもと、患者さんや利用者さんの身の回りのお世話をするだけの仕事です。
 
しかし、日本の「介護福祉士」は、生活の専門職です。患者さんや利用者さんを取り巻く社会との関りについても専門性を発揮します。だから介護「福祉」士なのです。
 
 
さて、私が提案する「介護福祉士」のあるべき英訳は、「Registered Social Care Worker」です。
 
 
 
世界が日本の介護に一目を置いているのだから、正しくプロデュースして、介護を使って外貨を稼ぐべきです。そうすれば、必然的に優秀な介護留学生が日本に集まるでしょう。日本で稼ぐのではなく、日本の介護を使って、世界で稼ぐ道筋を見せるのです。そのための第一歩が、「介護福祉士」の英訳を、戦略的に考えることだと思います。