海外介護

日本の介護を輸出するために必要なこと

◆地元の言葉で届ける認知症紙芝居

イロイロ、ロハス、シライ&バコロドの3都市を回るキャラバンツアー。その前日に、認知症紙芝居のトレーニングを行いました。

今回の私の裏テーマは、認知症紙芝居のローカライズです。つまり、私が演者となって紙芝居を披露するのではなく、地元の人がその土地の言葉で演じるということです。

トレーニングでは、認知症紙芝居の特徴を説明し、絵の見せ方、聴衆とのやり取り、その場の状況に合わせた対応など、これまで私が現場で体得してきたノウハウを伝えていきました。

◆演者を支える「セコンド」の役割

そして翌日からのイベントでは、私はアシスタントにまわり、演者がパフォーマンスしやすい環境づくりに徹しました。

紙芝居を引くだけではありません。プロジェクターの操作、小道具の出し入れ、聴衆へのお菓子配り、タイムキーパー。裏方の仕事は、意外と多いのです。

ボクシングで例えるなら、セコンドの役割ですね。

演者(ボクサー)が、どれだけ思いきり力を出せるか。そのためのアシストを心がけました。

パフォーマンスの後、初デビューの演者に感想を聞くと、「観客がちゃんと聞いてくれていた!」と興奮気味に話してくれました。

そうなんです。

楽しい雰囲気のイベント会場で、かたい認知症の話をしても、たいていは聞いてもらえません。しかし、レクチャーとエンターテインメントを融合した「認知症紙芝居」には、聴衆の心を掴み、話に耳を傾けてもらう力があるのです。

この手応えは、実際にステージに立って体感しないと分からない興奮だと思います。

◆学びが、自発的な行動に変わった

キャラバンの後、紙芝居を実践した受講生の一人からメッセージが届きました。

自宅に親戚を集めて、認知症紙芝居のミニ発表会を開いたそうです。

トレーニングとイベントでの発表を通して、自信を深めたようでした。これからも認知症紙芝居を使った啓発活動に邁進したい、という嬉しい言葉も添えられていました。

教育が、受講生の行動変容にまでつながった。

〝認知症紙芝居のローカライズ〟という裏ミッションの一端を果たせたようで、本当に嬉しかったです。

◆日本の介護を届ける職人とビジネスの力

これまで、さまざまな方法で日本の介護を現地に伝えてきました。

介護教育のコンテンツやサービス、プロダクトの導入までは、ビジネスの文脈で決まります。しかし、それを実際に使うかどうかを決めるのは、現場の人たちです。

現場で手足を動かしている人たちが心から納得しなければ、どんなコトもモノも、使われないまま消えていきます。そんな現実を何度も見てきました。

そして、私自身も、数々の失敗を通して分かったことがあります。

日本の介護を輸出するために必要なのは、日本の介護を心から信じ、現地の人たちと共に汗をかき、現場で改善を繰り返せる、技と理念を持った職人です。

職人は、言葉ではなく、生き様と姿勢で、言葉にならない想いを伝えます。それが現場の人の心を動かすのだと思います。

そして海外での介護職人の仕事は、自分がリングに上がり続けることではありません。現地の人をリングに上げ、勝たせることです。今回のキャラバンで、私はそれをセコンドの位置から実感しました。

ただし、リングそのものを用意するのは、ビジネスの力です。

事業をつくり、場をつくり、仕組みを回す人がいて、はじめて職人は現場で力を発揮できます。

だからこそ、ビジネスの専門家と介護職人がタッグを組んで、日本の介護を世界に届ける必要があります。どちらのピースが欠けても、上手くいきません。

私自身は、職人寄りの人間だと自認しています。優秀なビジネスパーソンと組み、セコンドとして現地の演者を支えながら、これからも日本の介護を世界に届けていきます。