海外介護

届く言葉は、現場から生まれる

■弱点

先日、インタビューを受ける機会があり、自分のこれまでのキャリアを振り返りました。

いくつかのターニングポイントがありますが、私にとって特に大きかったのは、パンデミックの2年間、ヘルパーとして介護の仕事と徹底的に向き合った経験でした。

もともと海外で仕事をしたいという思いがあり、日本にいる間にできるだけ多くの職場を経験し、見識を広げたいと考えていました。

実際、職場が変われば介護の考え方ややり方は大きく異なります。自分の介護観を固定化しないという意味では、さまざまな経験を積めたことは大きな財産でした。

しかし一方で、ひとつの職場に腰を据え、長期的に介護の仕事と向き合った経験が乏しいことが、自分の中では弱点として残っていました。

外国人に介護を教える立場になってからは、その弱みをより強く意識するようになりました。

いつかもう一度介護の現場に戻らなければならない

その思いが、心の中でくすぶり続けていました。

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コロナ前の介護クラス

■現場への回帰

とはいえ、フィリピンで事業の基盤をつくった後に帰国し、再び一介護職として働くことは現実的ではなく、40歳を過ぎてからの方向転換には勇気が必要でした。

それでも、このもやもやを解消するには現場に戻るしかないということも分かっていました。そんな時にコロナが発生し、人材送り出し事業は停止。結果として人生がゼロリセットされました。

積み上げてきたものが崩れていく無力感を味わいながらも、心のどこかでは「これで介護と向き合える」という不思議な安堵感もありました。

当面は厳しい状況になるかもしれない。しかし後に振り返った時、「あの選択は間違っていなかった」と思えるようにしよう。そう覚悟を決め、10年ぶりに介護の現場に戻りました。

■本音で伝えられるようになった理由

現在、再び外国人介護教育に携わりながら、清々しい気持ちでいます。介護の仕事に徹底的に向き合い、やり切ったという納得感があるからです。

ゼロから新しい環境に飛び込む外国人ケアワーカーに対して、耳障りの良い言葉ではなく、自分の実感を伴った言葉を伝えられるようになりました。

自分の言葉をどう受け取るかは相手次第です

それでも、自分の心に正直な言葉を語れるようになったことは、教育に携わる者として大きな一歩だったと感じています。

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コロナ後の出国前研修

■変化してきた学習動機

最近、外国人ケアワーカーの教育に関わる中で感じるのは、自己成長を求める人が増えてきたということです。

コロナ前は「日本で働けばどれだけ稼げるか」という言葉で学習意欲を高めることもありました。しかし今は、そのような言葉を使うことはほとんどありません。

そうした声掛けは一時的には響いても、日本で働き始めればすぐに消えてしまうからです。

それよりも、介護の仕事が持つ本質的な魅力を伝える方が、はるかに心に残ります。自己成長を求める人にとって、介護経験を積むことは理にかなった、価値のある機会です。

そこに確信があるからこそ、本音で伝えられます。

■伝え方よりも大切なこと

外国人ケアワーカーの受け入れが進む中で、育成に関わる人も増えてきました。背景が分からない相手に対して、「どう伝えればいいのか」と悩む声を聞くことも多くなりました。

私の経験から言えば、大切なのは伝え方を工夫すること以上に、自分の言葉に確信を持つことです。本音から生まれた言葉は、無理に飾らなくても自然と相手に届きます。

そして可能であれば、一度ゼロリセットして新しい環境に飛び込んでみることをお勧めします。

職場を変えることが難しくても、趣味や新しいコミュニティでも、アウェイの環境に身を置くことで、外国人ケアワーカーが感じている不安や期待を疑似体験することができます。

その経験が、自然な伝え方を教えてくれるはずです。

■介護は人を成長させる

2年間の現場復帰は試練の連続でしたが、間違いなく自分を成長させてくれました。

この素晴らしい経験を、これから日本で介護に挑戦する外国人ケアワーカーにも、ぜひ味わってほしい。心からそう願っています。

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