海外介護

認知症ケア専門士へのチャレンジ

フィリピンのロックダウン期間がとうとう6カ月目に突入しました。フィリピンのテレビ局ABS-CBNによると、フィリピンの失業者の数が約2700万人、失業率が45.5%ととんでもない数になっています。

感染者の数は依然として3000人~4000人と毎日増え続けており、病院もすでに満床で患者が受け入れられない状態のようです。

したがって、私たち外国人は、病気になっても病院には入れませんので体調管理が一層大切になります。また万一コロナにかかってしまい、入院すると治療費が1Mペソ(約200万円)くらい掛かるようです。なおさら病気になんてなれません。

医療従事者の数も足りないようで、政府が医療従事者に病院で働くよう呼び掛けています。その一環として、医療従事者の国外就労を一時的に禁止する法律を施行しています。フィリピン国内の病院で人手不足なのに、なぜ海外で医療従事者が働きに出るのか、といった事情はよくわかります。

一方で、まごのてグローバルのビジネスの柱が、フィリピン人介護士の教育と、日本への介護人材の送り出しになります。フィリピン政府の意向は理解はしているものの、事業としては大きなダメージを受けています。

教育はオンラインで継続していますので、来日の準備が整ったフィリピン人介護士の数は増えていますが、出国できずにもどかしい状況が続いています。

しかし、まごのてグローバルだけでなく、フィリピン全体、そして世界全体で苦しい状況ですので、何とか知恵を絞ってこの状況を乗り切るように試行錯誤をしています。

このように、ウイルスの脅威がある世の中では、国をまたいで行うビジネスだけではなく、オンラインで完結できるようなビジネスを作っていく必要性を痛感しています。

そこで、Zoomを使ったオンラインセミナーや、オンラインでの介護の英語クラスをスタートしました。まだまだ収益化にはほど遠い状態ですが、何事もスタートしなくては始まりません。

話は変わりますが、知人のご縁をいただき、日本認知症ケア学会と繋がり、国際認知症ケア連合( International federation for dementia care)のフィリピンでの啓もう活動のお手伝いをすることになりました。

国際認知症ケア連合では、今年からオンラインで認知症ケア専門士の受験ができるようになります。フィリピンで資格を取得してもインターナショナルで使える資格になりますので、今後は海外から英語で受験する人も出てくるかもしれません。

介護の英語クラスの学習の先に、英語で認知症ケア専門士の資格取得を目指すようなカリキュラムができれば、介護の英語を学びたいという需要が出てくるかもしれません。まずは、まごのてグローバルとして認知症ケア専門士の資格を取得するべく、12月に受験します。

このコロナ危機をチャンスに変えられるように、出来ることはなんでもチャレンジして、頑張ります!

 

世界の介護施設とコロナ状況

フィリピン、マニラのロックダウンは5月15日までとなりようやく緩和されます。ほぼ2カ月近く買い物以外自宅待機となっておりました。これでようやく経済が回っていきそうです。

さて、コロナの影響は世界の高齢者施設に大きな影響を出しているようです。アメリカのグローバル経済に関するオンラインメディアQuartzの記事の中で、アメリカでは、コロナの感染症が始まってから1万人以上の方が高齢者施設でなくなっているようです。また、フロリダ州とカリフォルニア州にある高齢者施設のうち1/5がコロナ発症しているようです。カナダでは1200名のコロナによる死者数のうち半数以上が公的高齢者施設入居者であり、また、ヨーロッパではコロナによる死者の半数が高齢者施設とのことです。(こちらの記事の日付は2020年4月29日)

5月5日付け、グーグルによる世界のコロナ情報では、コロナによる死者数、アメリカ71,921、カナダ4043人、日本566人となっています。

コロナ死亡者が高齢者施設で多数起こっている世界の現状を見てみると、日本の介護業界は本当に大健闘の活躍だと思います。現場最前線で働いている介護職の方々には本当に感謝を致します。ありがとうございます。

このまま、日本はコロナを食い止めていくことで、日本の介護業界は世界的にもさらに注目されること間違いなしです。日本人のチームワーク、衛生管理、蓄積された介護サービスのノウハウは世界でも十分に通用します。

是非このコロナ危機を乗り越えて、日本の介護を世界に知らしめていきましょう!!

リバースイノベーション

【リバースイノベーション】とはご存知でしょうか?

新興国で生まれた技術革新(イノベーション)や、新興国市場向けに開発した製品、経営のアイデアなどを先進国に導入して世界に普及させるという概念。先進国の技術や商品を新興国へ移転するという従来手法とは逆に、新興国から先進国へ逆流reverseさせるので、リバース・イノベーションとよばれる *日本大百科全書(ニッポニカ)参照

このリバースイノベーションを最近身近に感じる出来事がありました。

私は大学卒業後アメリカ、カリフォルニアに留学をしました。貧乏学生だったのですぐにアルバイトをして生活費を稼がなくてはなりませんでした。そこで、友人の紹介で日本食レストランで働かせてもらうことになりました。仕事はキッチン担当です。モンゴル人と一緒にチキンを焼いたり、メキシコ人と一緒に板場で巻き寿司を作ったりしました。その時にカリフォルニアロールの巻き方を教えてもらいました。本場カリフォルニアでのカリフォルニアロールです。ご存知のように巻き寿司は日本が発祥国です。江戸中期の1750年代に生まれ一般化したようです。その後、約200年の歳月が経て1970年代にアメリカ西海岸を中心に寿司が一大ブームとなり、その中でカリフォルニアロールが生まれたようです。カリフォルニアロールはアメリカで大人気の巻き寿司となり、その結果、日本にも逆輸入されました。これも1つのリバースイノベーションですね!

ところで、このカリフォルニアロールですが、フィリピンでも大人気のメニューです。フィリピンの場合、中身はアボカド、カニカマ、キュウリ、そしてマンゴーが入ります。手軽に作れてみんなから喜ばれるのでホームパーティに呼ばれると、いつもこのカリフォルニアロールを作っていきます。

(オフィスでのバースデーパーティー)

こんな感じでカリフォルニアロールをよく作っているのですっかり私の定番料理となりました。しかし、手軽で簡単に作れるカリフォルニアロールですが、1つだけ難点があります。それは、持ち運びが難しいことです。巻き寿司を作って、切って、きれいに盛り付けても、その状態のまま持ち運ぶのが難しい。しかも、フィリピン人は炭水化物が大好きで、たくさん食べます。大量の巻き寿司を手軽に、そして、できればきれいに盛り付けられた状態で持ち運ぶにはどうしたら良いかが課題でした。

そんなある日、フィリピン人の同僚がポットラックパーティの時に、カリフォルニアロールをデリバリーで注文して持ってきました。中身を見て私は驚愕しました。

大量のカリフォルニアロールがびっしりと詰まていて、それでいて美しく盛り付けられており、しかも持ち運びしやすい、とすべてを兼ね備えていました。アメリカで生まれたカリフォルニアロールが、新興国のフィリピンでさらに〝イノベーション〟されていました。

フィリピンでは配車アプリを使ったフードデリバリーサービスが、ここ数年ですっかり定着しました。パーティー好きのフィリピン人にとって、持ち運びのしやすいくイノベーションされたカリフォルニアロールは今後さらに人気が出てくるのではと感じています。私も早速真似して作ってみました。

アメリカ式の巻き寿司と比べてみてください。

1~2人で食べるならアメリカ式の量でも十分ですが、フィリピンのパーティーは誘っていない近所の人たちもどんどん参加するような人数が読めないパーティースタイルです。従って料理をたくさん用意する以外に方法がありません(笑)

一方、今後は日本もダイバシティや地域コミュニティの再形成がテーマになっていきますので、フィリピン式のカリフォルニアロールが『リバースイノベーション』されて、日本に逆輸入されるかもしれませんね。

前置きが長くなりましたが、私はこの『リバースイノベーション』が日本の介護業界にも起こるなと感じています。2020年の今年から外国人介護士がぞくぞくと日本にやってきます。フィリピン、ベトナム、インドネシア、ネパール、カンボジア、バングラディッシュ、パキスタン、などなどアジア諸国を中心にその輪が広がってきています。もちろん、介護は日本が最大の先進国でありますが、今後はこのようなダイバシティ溢れる外国人介護士の方々によって、間違いなく日本の介護のカタチは変わっていくでしょう。私はポジティブに変わっていくと思っています。その理由の一つには、日本にはなくて、諸外国には当たり前のように存在しているものが、介護と強く結びついていて、その存在が日本の介護を昇華してくれるだろうと考えているからです。それは何か、ずばり、『宗教観』です。

歳を重ね、老後のステージを迎えると、人は徐々に『死』のことを考えるようになります。〝死んだらどうなってしまうのか〟と。その時に、何か絶対的なものに対する信仰心があるかどうかで、『死』に対する捉え方が変わってくるのではないでしょうか。フィリピンであればキリスト教、インドネシアであればイスラム教、ネパールであればヒンドゥー教と、それぞれがそれぞれの生死観を持っています。しかし、日本にはその考えが失われてきてしまいました。そこに、日本の高齢化問題の根本的な原因が隠されているのではないでしょうか。

〝介護と宗教観〟という日本にとっては新しい概念を、新興国から逆輸入することで、日本の介護は1つステージが上がっていくのではないでしょうか。

利用者と介護士の未来のカタチ

先日、National center for Geriatric Health (国立老齢医学センター)のデイケアサービスでイベントを開催しました。内容は①私の奥さんが所属しているコーラスサークルの演奏会②私の息子の『一生餅』の行事です。かなり私的な内容のイベントを開催させてもらいました(笑)それでもありがたいことに、デイケアサービスに通うおじいさん、おばあさんたちはいつも私の開催するイベントを楽しみにしていてくれるので嬉しい限りです。皆さんの期待に応えるべく、当日は早起きして巻きずしをフィリピン流にアレンジして作りました。

まずは、コーラスサークルの演奏会です。

『茶摘み』の演奏では、利用者も一緒に参加して手遊びをして盛り上がりました。フィリピン人は本当に盛り上げ上手ですね。

そして、次は我が息子の『一升餅』です。なにがなんだかわからない状態で、1.8キロものお餅を括り付けられます。

今回は『一升餅』に、『選び取り』も併せまして、我が子はお餅を背負いながら、将来を占う職業を選ぶことになりました。

案の定、お餅の重さで泣きわめき、なんとか母親のいるところまでたどり着きました。彼が選んだのは『医者』をあらわず聴診器でした!ただ、選んだというよりは倒れ込んだところにたまたま聴診器があり、それを握っただけです(笑)彼が将来選ぶ仕事は、今の世の中にはない仕事かもしれませんね。

さて、コーラスも息子の行事も大いに盛り上がり、食事の時間になりました。一升餅で使ったお餅は、きなこ餅として皆さんに食べてもらいました。フィリピンにも餅菓子があるので、なじみがあり、大人気でした!私の巻きずしも喜んでもらいました。

やれやれ、イベントも大成功で、妻も喜び、デイケアサービスの皆さんも喜びで、これにて任務完了と私も胸をなでおろしていました。すると、1人のおばあさんが『この風呂敷を使ってもいいか』と私に尋ねてこられました。〝何に使うのかな?〟と様子をうかがっていると風呂敷を床に敷いて、他のおばあちゃん達に手招きしながら声を掛けています。しばらくすると、ぞくぞくとおばあちゃん、おじいちゃんたちが風呂敷の周りを踊りながら回りだしました。〝日本の盆踊りのような感じなのかな~〟と微笑ましく見守っていると、次から次へと風呂敷めがけてお金を投げ入れています。みるみるうちにお金が風呂敷にたまっていきました。その様子を撮った動画がこちらです↓

フィリピン人のおばあちゃんに招かれてコーラスサークルの日本人のみなさんも輪を囲んで踊りだしました。そして、踊りが終わった後に、風呂敷を借りに来たおばあちゃんが、集まったお金を風呂敷に包んで私のもとに持ってきてくれました。

『Happy Birthday Aki(息子のニックネーム)』といって風呂敷を渡してくれたのです。

デイサービスに通うおばあちゃんもおじいちゃんも年金?暮らしのはずでそんなに生活に余裕があるとはないかと思います。それなのに、こうやって息子のために『プレゼント』してくれるのは本当にありがたいことです。先日は、そのお金を使って息子に誕生日プレゼントを買いました。

フィリピン生まれの日本人の息子は、日本人からもフィリピン人からも1歳の誕生日をお祝いしてもらい、本当に幸せ者です。私がデイサービスの通うおばあちゃん、おじいちゃんに『プレゼント』をする予定が、それ以上の『プレゼント』をみなさんから頂きました。こころとこころが通じ合った素敵な体験をさせていただきました。

利用者と介護士という立場ですと、『サービスを与える側』と、『サービスを受ける側』という構造になりがちですが、介護業界における未来の利用者と介護士のあり方は、『相互に与えあう』関係に、パラダイムシフトしていくのではないかと考えるようになりました。

新しい価値基準で世の中を見回してみると、また違ったカタチで世界が広がっていることに気づけますね。

一次情報が大切

私は人生の中で恩師と呼ぶべき大切な人が何人もいます。その中の一人の恩師が、学生時代に大切なことを教えてくれました。これから社会人になる私に向けて、はなむけの言葉として、松下幸之助のエピソードを話してくれました。下記のサイトから文章を引用します。【http://100ken-1bun.blogspot.com/2015/04/blog-post_44.html】

 

「君、食べたんか?」 [松下幸之助]

 


話:上甲晃

 松下政経塾の頃、私が一番心を砕いたのは役員会だったのです。役員会では松下幸之助理事長のもとに人が集まりますが、役員は当時の錚々たるメンバーで、いわば日本の第一人者と言われる人たちでした。テレビか新聞、雑誌でしか見たことのないような人物がゾローっと並ぶわけですから、われわれは大変な気遣いをしました。

 とりわけ私が心を砕いたのは”お昼のお弁当”です。「どんな弁当を出すか」というのに大変心を砕いたのです。あらゆる弁当屋さんから情報を集めて、それを一覧表にして、この弁当にはどんな材料が入っていてとか、価格も書いて、写真まで撮って決裁をもらいに行きました。



 松下幸之助がずっと説明を聞いていて、最後に一言

「うまそうやな」

と言ったので、私も何気なく

「美味しいと思います」

と言ったのです。



 すると松下幸之助の顔が変わりました。

「君…、いま”思う”と言ったな。…食べたんか?」

とこう言うのです。

「いえ、食べてません…」

と言ったら

「なんで大事なお客さんに弁当を出すのに、自分で食べてへんのや?」

と叱られたのです。



「自分で実際に食べてみる。あ~うまい。分量もちょうどいい具合。これだったらきっと喜んでもらえる、と思って出す弁当は、弁当とともに君の心が伝わるんや。君、それが魂の入った仕事やで。君の仕事には魂がはいっていない」

と、こう言うのです。自分で実際に食べてみる。これが一次情報なのです。美味しいなと思う。これが一次情報なのです。

「すべてそういうレベルで仕事をしていかないと、仕事は上滑りしてしまう。そういうレベルで仕事をすればカネ以上の値打ちがでる」

と言って叱られたのです。【引用終わり】
 
 

恩師はこのエピソードを話すことで、私に一次情報の大切さを教えてくれました。自分の目で見て、耳で聞いて、肌で感じたことを信じる。それ以外の情報はすべて2次情報、3次情報になるので、判断材料にはしても、鵜呑みにはしないようにする。そのような判断基準で情報を整理していくことを心がけるようになりました。

今から10年前に、『日本の高齢化問題解決にとって、フィリピン人介護士が重要な役割を担う』という仮説を立てて、私はフィリピンにやって来ました。昨年の2019年に、ようやく外国人介護職が日本で働くことのできる、【特定技能ビザ】が新設され、フィリピン人介護士にも門戸が開かれました。しかし、来日の前に、日本政府が設定した介護試験に合格しなくてはなりません。その試験対策のクラスを、私が受け持っています。彼らは半年間という限られた期間の中で、日本語と日本式介護の勉強を行います。日本で働くことを夢見て、一生懸命に勉強をしている彼らの様子を間近で見ていて、私の仮説は正しいのではないかと考えています。それが、日本の介護現場で10年働き、フィリピンの教育現場で日本式介護を教えている、私の一次情報からの判断になります。

 

 

特定技能ビザによる外国人介護職受け入れについては、2次情報、3次情報から判断した人たちが、いろいろなことを言っています。情報が簡単に手に入る時代だからこそ、松下幸之助の仰るように、1次情報を丁寧に集めることが大切な時代になってきたなと感じています。恩師からのはなむけの言葉を忘れずに、自分の1次情報を信じて、発信していきます。