海外介護事業サポート

カルチャーマップとジェネレーションギャップ

エリン・メイヤーの著書、『異文化理解力(The Culture Map)』をご存知でしょうか?本のキャッチコピーには ”海外で働く人、外国人と仕事をする人にとって、語学よりもマナーよりも大切なこと”と書かれています。

グローバルリーダー育成プログラムで、異文化理解のワークショップをしていただいている講師の方からの推薦で、上記の本を読んでみました。なるほど~!と勉強になることが満載で、これから外国人介護士の受入れをする施設リーダーには是非読んで頂きたい一冊です。この本の特色は、8つのマネジメント領域の沿って、現場ですぐに使える有益なアドバイスと、ケーススタディが満載であるため、とても分かりやすいこと、そして、カルチャーマップを使って、文化の違いを可視化したことが挙げられます。

8つの領域とは、(コミュニケーション)(評価)(説得)(リード)(決断)(信頼)(見解の相違)(スケジューリング)となっています。この8つの領域での各国の特色をマップにまとめています。

上記の表をみてわかるように、例えば(決断)の項目での、日本と中国との違いを見てみてください。日本では何かを決断するとき、『合意志向』が一般的です。会社が大きければ大きいほど、何かを決めるまでに、稟議書を上へ上へと上げていかなくてはなりません。そのため、決定が遅いのですが、決まってからのスピードは速いです。なぜならば決まるまでに皆の合意が出来ているからです。

逆に中国の場合は、『トップダウン』で物事が決定されます。フィリピンでビジネスをしていて感じることは、中国人の決定の速さです。日本企業が社内で協議を繰り返している間に、中国企業はさっさと決断して物事を進めていきます。

上記のケースを介護現場で当てはめた場合、例えば、日本人介護リーダーが中国人介護士数人と、お花見の場所を決めるとします。『〇〇公園がいい』『△△の河川敷はどうか』といろいろな意見が出てきます。そこで、みんなの意見をまとめるだけで自分で決められないとしたら、中国人スタッフから『リーダーシップの欠如』というレッテルを貼られるかもしれません。中国人は、リーダーが決断して当たり前と捉えているからです。その決断がどうであれ従うのが中国の文化です。

また『スケジューリング』の項目でも、時間に厳しい日本と比べると、中国は前後にゆとりを持ったスケジューリングになります。フィリピンであれば、さらにゆとりを持った時間幅になります。フィリピンに精通する人ならだれもが知っている『フィリピンタイム』ですね。このように文化によって各項目の判断軸が変わってくるのです。

これから多国籍介護士をマネジメントする現場リーダーにとって、各国の文化的特徴を把握しておくのは必要不可欠なのではないでしょうか。

エリン・メイヤー女史のカルチャーマップは、世界30か国をカバーしてありますが、アジアは日本と中国のみがメインとなっています。介護業界では、アジア、特に東南アジアからの人材が主力になりますが、残念ながらそのデータがありません。そこで、私が独自に東南アジアに特化したカルチャーマップを作成しようと考え実行しています。

福井オリジナルの日本とフィリピンのカルチャーマップ

さて、カルチャーマップについて勉強を重ねている中で、どうしても腑に落ちないことがありました。それは、文化的な相違だけでは説明が出来ない、各世代間の違い、つまり『ジェネレーションギャップ』の存在です。

世代間の価値観の違いについて以前に、下記のブログでご紹介させていただきました。
https://ameblo.jp/jack-in-manila/entry-12411364398.html

同じ日本人であっても、20代と40代では生きてきた時代背景が異なり、それに伴って価値観も異なります。これは、日本だけでなく各国でも同じことが言えるのではないでしょうか。実際にフィリピン人をマネジメントしていると、20代と40代の価値観の違いは顕著に感じます。

ここが一つ盲点かもしれませんが、これから介護業界にやってくる外国人は皆『若い』です。なぜなら、経営者が若者を好んで選ぶからです。みんながみんな、出稼ぎでお金だけを目的に日本に来るわけではありません。働き甲斐や自己存在意義など、日本の40代後半バブル世代とは違った価値観を持ってやってくる外国人介護士も多くいるはずです。

従って、現場リーダーには異文化理解と同時に、世代間の相違についての受容力が求められます。私が考えるこれからの介護業界に必要なマネジメント力とは、カルチャーマップを横軸に、ジェネレーションギャップを縦軸に捉えた、複合的なマネジメントです。多様性社会の出現で、現場リーダーは、スタッフ一人一人の個人に合わせてマネジメントをしていく時代になりました。

そこで、カルチャーマップの『C』とジェネレーションギャップの『G』の頭文字を取った、『CGマップ』なるものを体系的にまとめて、自分のオリジナルマネジメント手法を開発していきたいと思います。近未来の日本の介護業界をイメージして、日本と介護業界の外側から自分が出来ることをチャレンジしていきます!