フィリピンでの生活

目に見えないケア

フィリピンで生活していると日本ではなかなか出会えない面白い人に出会います。特に私は交流会を開催していますので面白い人に出会う確率が高いです。その中で最近出会って仲良くしている方は、日本人占い師の女性です。

(イメージ画)

 

日本人交流会で彼女を見かけた時、『ただ者ではないオーラ』を感じました。表向きは不動産業界にいるが、本職は占い師とのこと。私は、(自分とは異なる変わった人)、(何かに突出している人)には積極的に会うようにしているので、早速彼女と会う約束をして、その後占いを受けることにしました。

彼女の占いの基本は占星術で、占いの内容については『なるほど~』と納得のいくことが多くありました。ちなみに皆さんは【帝王切開】の由来はご存知ですか?諸説があるのですが、中国では占星術によって皇帝が生まれる誕生日が決められており、その誕生日を守るために帝王切開で出産したという説があります。生まれた日、時間、場所と天体との関係で、その産まれてくる赤ちゃんの運命がある程度決まるということです。帝王になるためには、この日、この時間に生まれなくてはならないため、自然分娩ではなく、切開して生み出す、ことから【帝王切開】という言葉が出来たようです。占星術には長い歴史があり、深い叡智を感じます。

さて、私の占い内容は置いといて、彼女からの興味深い話を聞きました。占い師として以前はメディアにでるくらい有名であった彼女がなぜフィリピンに来たかというと、その理由は日本の介護問題にありました。依頼主から様々な悩み事を打ち明けられるのですが、その中で辛い相談事の一つが、親の介護についてだそうです。在宅介護に疲れ切り、先の見えない介護のスパイラルにはまってしまった介護者から『私の親はいつ死にますか』という相談が一番辛いと話してくれました。

私自身、数年前に父親をがんで亡くしました。がんの宣告を受けてから家族の状況は一変し、すべてが父親の看病を中心とする生活になりました。父親の病状で一喜一憂をする日々は薄氷を踏む思いで、本当にいつ家族のバランスを失ってしまうのかわからない状態でした。なので、在宅介護に疲れ切った中年の息子さん、娘さんの気持ちはよくわかります。

日本の介護を取り巻く状況に光が見えず、海外から介護問題を解決する方法はないかと考えて、フィリピンに来られたようです。意外なところで私と想いが一致して、それからは介護と占星術という一見すると全く異なる分野から、これからの日本の介護について議論を深めています。

 

話は変わりますが、私はフィリピンの高齢者施設を調査しています。介護後進国のフィリピンに日本の介護問題の解決策があるのではないかと考えているからです。そこで面白い光景に出会いました。日本のグループホームのような施設に介護ボランティアをしていた時のことです。居室でオムツ交換の見学をしていると、突然白い服をきた初老の男性が本を片手に入ってきました。フィリピン人スタッフは全く気にせずオムツ交換を続けていたので、私も傍観をしていると、その男性は本を読みだしました。後で話を聞いてみると、地域に住むその初老の男性は、毎週日曜日にボランティアで聖書を読みに来てくれるようです。

 

オムツ交換の時に聖書を読まなくても。。。とツッコミどころはあるのですが、本人はとても真剣に聖書を読んでくれてました。タガログ語なので内容は分かりませんが、おそらくは人としての生き方やあり方についての話だろうと想像します。

また、別の高齢者施設で、韓国の宗教団体が運営し、身寄りのないお年寄りをケアしている施設があります。様々な理由で路上生活をしていた高齢者の方々が生活をしています。もちろん入居費用など支払えませんのですべて無料です。個室もなく、訪ねてくる家族もいませんが、入居者の皆さんはとても穏やかな表情をしています。私にはそれが不思議でなりませんでした。私なりに理由を探ってみると、施設に住み込みでケアを行っているシスターの高い精神性、そして、1日2回みんなで集まって行う祈りや、日曜日に行うミサが、入居者やケアスタッフに安らぎを与えているのではないかと感じました。

 

 

日本は、先進国であり物理的には進んだ国です。しかし、生老病死の苦しみに直面した時に、寄り添える何かが足りない。それが宗教なのか、心理学的な心のケアなのか分かりませんが、その何かを探って創り上げていくことが、日本の介護問題解決の糸口になるのではなかと感じています。フィリピンはいつも、私にいろいろなことを考える機会を与えてくれます。