フィリピンでの生活

新しい家族のあり方

3月16日からマニラではロックダウンが始まりました。

ロックダウンにともない、通いで来てもらっているお手伝いさんも移動手段がなくなりますので、住み込みで働いてもらっています。1歳のやんちゃ坊主がいますので、彼女の存在は本当にありがたいです。その感謝の気持ちを伝えるべく、毎週日曜日の彼女の休日には、一緒に料理を作ることにしています。今まで、たこ焼き、お好みやき、と作りました。そして、昨日の感謝のサンデークッキングは、餃子でした。毎回大量に作って、彼女の友達やお手伝いさん仲間におすそ分けをしてもらっています。このおすそ分けが彼女の喜びにもつながっているようです。

さて、お手伝いさんとの共同生活も4週目になりました。家族でない人との共同生活はどうなるかなと気になりましたが、順調です。まず、部屋の構造が住み込みのお手伝いさんがいることを前提に作られているのが大きな理由ですね。そしてもう1つは、彼女との距離の取り方が上手く作用しているのだと思います。

ボクシングもそうですが、相手との距離の取り方は重要です。私の場合、雇用主と従業員という契約で結ばれた関係だけではなく、だからといって家族でもない、そんな距離感を保っています。その距離感は常に一定ではなく、臨機応変に変化させています。

なぜこのような距離感がとれるのかというと、私自身、アメリカでは住み込み介護士として働いていたからです。その時に、自分がされて嬉しかったことをして、嫌だったことをしないということを実践しています。このコロナさんの1つの功罪として、家族のあり方も見つめることになるでしょうね。家族のような家族でない、そんな共同体も増えていくのではとないかと思います。

実はこの、家族のような家族でない距離の取り方が、外国人介護人材の受入にとって重要になっていきます。そのことについてもおいおい記事にしていきたいと思います!

 

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リバースイノベーション

【リバースイノベーション】とはご存知でしょうか?

新興国で生まれた技術革新(イノベーション)や、新興国市場向けに開発した製品、経営のアイデアなどを先進国に導入して世界に普及させるという概念。先進国の技術や商品を新興国へ移転するという従来手法とは逆に、新興国から先進国へ逆流reverseさせるので、リバース・イノベーションとよばれる *日本大百科全書(ニッポニカ)参照

このリバースイノベーションを最近身近に感じる出来事がありました。

私は大学卒業後アメリカ、カリフォルニアに留学をしました。貧乏学生だったのですぐにアルバイトをして生活費を稼がなくてはなりませんでした。そこで、友人の紹介で日本食レストランで働かせてもらうことになりました。仕事はキッチン担当です。モンゴル人と一緒にチキンを焼いたり、メキシコ人と一緒に板場で巻き寿司を作ったりしました。その時にカリフォルニアロールの巻き方を教えてもらいました。本場カリフォルニアでのカリフォルニアロールです。ご存知のように巻き寿司は日本が発祥国です。江戸中期の1750年代に生まれ一般化したようです。その後、約200年の歳月が経て1970年代にアメリカ西海岸を中心に寿司が一大ブームとなり、その中でカリフォルニアロールが生まれたようです。カリフォルニアロールはアメリカで大人気の巻き寿司となり、その結果、日本にも逆輸入されました。これも1つのリバースイノベーションですね!

ところで、このカリフォルニアロールですが、フィリピンでも大人気のメニューです。フィリピンの場合、中身はアボカド、カニカマ、キュウリ、そしてマンゴーが入ります。手軽に作れてみんなから喜ばれるのでホームパーティに呼ばれると、いつもこのカリフォルニアロールを作っていきます。

(オフィスでのバースデーパーティー)

こんな感じでカリフォルニアロールをよく作っているのですっかり私の定番料理となりました。しかし、手軽で簡単に作れるカリフォルニアロールですが、1つだけ難点があります。それは、持ち運びが難しいことです。巻き寿司を作って、切って、きれいに盛り付けても、その状態のまま持ち運ぶのが難しい。しかも、フィリピン人は炭水化物が大好きで、たくさん食べます。大量の巻き寿司を手軽に、そして、できればきれいに盛り付けられた状態で持ち運ぶにはどうしたら良いかが課題でした。

そんなある日、フィリピン人の同僚がポットラックパーティの時に、カリフォルニアロールをデリバリーで注文して持ってきました。中身を見て私は驚愕しました。

大量のカリフォルニアロールがびっしりと詰まていて、それでいて美しく盛り付けられており、しかも持ち運びしやすい、とすべてを兼ね備えていました。アメリカで生まれたカリフォルニアロールが、新興国のフィリピンでさらに〝イノベーション〟されていました。

フィリピンでは配車アプリを使ったフードデリバリーサービスが、ここ数年ですっかり定着しました。パーティー好きのフィリピン人にとって、持ち運びのしやすいくイノベーションされたカリフォルニアロールは今後さらに人気が出てくるのではと感じています。私も早速真似して作ってみました。

アメリカ式の巻き寿司と比べてみてください。

1~2人で食べるならアメリカ式の量でも十分ですが、フィリピンのパーティーは誘っていない近所の人たちもどんどん参加するような人数が読めないパーティースタイルです。従って料理をたくさん用意する以外に方法がありません(笑)

一方、今後は日本もダイバシティや地域コミュニティの再形成がテーマになっていきますので、フィリピン式のカリフォルニアロールが『リバースイノベーション』されて、日本に逆輸入されるかもしれませんね。

前置きが長くなりましたが、私はこの『リバースイノベーション』が日本の介護業界にも起こるなと感じています。2020年の今年から外国人介護士がぞくぞくと日本にやってきます。フィリピン、ベトナム、インドネシア、ネパール、カンボジア、バングラディッシュ、パキスタン、などなどアジア諸国を中心にその輪が広がってきています。もちろん、介護は日本が最大の先進国でありますが、今後はこのようなダイバシティ溢れる外国人介護士の方々によって、間違いなく日本の介護のカタチは変わっていくでしょう。私はポジティブに変わっていくと思っています。その理由の一つには、日本にはなくて、諸外国には当たり前のように存在しているものが、介護と強く結びついていて、その存在が日本の介護を昇華してくれるだろうと考えているからです。それは何か、ずばり、『宗教観』です。

歳を重ね、老後のステージを迎えると、人は徐々に『死』のことを考えるようになります。〝死んだらどうなってしまうのか〟と。その時に、何か絶対的なものに対する信仰心があるかどうかで、『死』に対する捉え方が変わってくるのではないでしょうか。フィリピンであればキリスト教、インドネシアであればイスラム教、ネパールであればヒンドゥー教と、それぞれがそれぞれの生死観を持っています。しかし、日本にはその考えが失われてきてしまいました。そこに、日本の高齢化問題の根本的な原因が隠されているのではないでしょうか。

〝介護と宗教観〟という日本にとっては新しい概念を、新興国から逆輸入することで、日本の介護は1つステージが上がっていくのではないでしょうか。

 

 

利用者と介護士の未来のカタチ

先日、National center for Geriatric Health (国立老齢医学センター)のデイケアサービスでイベントを開催しました。内容は①私の奥さんが所属しているコーラスサークルの演奏会②私の息子の『一生餅』の行事です。かなり私的な内容のイベントを開催させてもらいました(笑)それでもありがたいことに、デイケアサービスに通うおじいさん、おばあさんたちはいつも私の開催するイベントを楽しみにしていてくれるので嬉しい限りです。皆さんの期待に応えるべく、当日は早起きして巻きずしをフィリピン流にアレンジして作りました。

まずは、コーラスサークルの演奏会です。

『茶摘み』の演奏では、利用者も一緒に参加して手遊びをして盛り上がりました。フィリピン人は本当に盛り上げ上手ですね。

そして、次は我が息子の『一升餅』です。なにがなんだかわからない状態で、1.8キロものお餅を括り付けられます。

今回は『一升餅』に、『選び取り』も併せまして、我が子はお餅を背負いながら、将来を占う職業を選ぶことになりました。

案の定、お餅の重さで泣きわめき、なんとか母親のいるところまでたどり着きました。彼が選んだのは『医者』をあらわず聴診器でした!ただ、選んだというよりは倒れ込んだところにたまたま聴診器があり、それを握っただけです(笑)彼が将来選ぶ仕事は、今の世の中にはない仕事かもしれませんね。

さて、コーラスも息子の行事も大いに盛り上がり、食事の時間になりました。一升餅で使ったお餅は、きなこ餅として皆さんに食べてもらいました。フィリピンにも餅菓子があるので、なじみがあり、大人気でした!私の巻きずしも喜んでもらいました。

やれやれ、イベントも大成功で、妻も喜び、デイケアサービスの皆さんも喜びで、これにて任務完了と私も胸をなでおろしていました。すると、1人のおばあさんが『この風呂敷を使ってもいいか』と私に尋ねてこられました。〝何に使うのかな?〟と様子をうかがっていると風呂敷を床に敷いて、他のおばあちゃん達に手招きしながら声を掛けています。しばらくすると、ぞくぞくとおばあちゃん、おじいちゃんたちが風呂敷の周りを踊りながら回りだしました。〝日本の盆踊りのような感じなのかな~〟と微笑ましく見守っていると、次から次へと風呂敷めがけてお金を投げ入れています。みるみるうちにお金が風呂敷にたまっていきました。その様子を撮った動画がこちらです↓

フィリピン人のおばあちゃんに招かれてコーラスサークルの日本人のみなさんも輪を囲んで踊りだしました。そして、踊りが終わった後に、風呂敷を借りに来たおばあちゃんが、集まったお金を風呂敷に包んで私のもとに持ってきてくれました。

『Happy Birthday Aki(息子のニックネーム)』といって風呂敷を渡してくれたのです。

デイサービスに通うおばあちゃんもおじいちゃんも年金?暮らしのはずでそんなに生活に余裕があるとはないかと思います。それなのに、こうやって息子のために『プレゼント』してくれるのは本当にありがたいことです。先日は、そのお金を使って息子に誕生日プレゼントを買いました。

フィリピン生まれの日本人の息子は、日本人からもフィリピン人からも1歳の誕生日をお祝いしてもらい、本当に幸せ者です。私がデイサービスの通うおばあちゃん、おじいちゃんに『プレゼント』をする予定が、それ以上の『プレゼント』をみなさんから頂きました。こころとこころが通じ合った素敵な体験をさせていただきました。

利用者と介護士という立場ですと、『サービスを与える側』と、『サービスを受ける側』という構造になりがちですが、介護業界における未来の利用者と介護士のあり方は、『相互に与えあう』関係に、パラダイムシフトしていくのではないかと考えるようになりました。

新しい価値基準で世の中を見回してみると、また違ったカタチで世界が広がっていることに気づけますね。

一次情報が大切

私は人生の中で恩師と呼ぶべき大切な人が何人もいます。その中の一人の恩師が、学生時代に大切なことを教えてくれました。これから社会人になる私に向けて、はなむけの言葉として、松下幸之助のエピソードを話してくれました。下記のサイトから文章を引用します。【http://100ken-1bun.blogspot.com/2015/04/blog-post_44.html】

 

「君、食べたんか?」 [松下幸之助]

 


話:上甲晃

 松下政経塾の頃、私が一番心を砕いたのは役員会だったのです。役員会では松下幸之助理事長のもとに人が集まりますが、役員は当時の錚々たるメンバーで、いわば日本の第一人者と言われる人たちでした。テレビか新聞、雑誌でしか見たことのないような人物がゾローっと並ぶわけですから、われわれは大変な気遣いをしました。

 とりわけ私が心を砕いたのは”お昼のお弁当”です。「どんな弁当を出すか」というのに大変心を砕いたのです。あらゆる弁当屋さんから情報を集めて、それを一覧表にして、この弁当にはどんな材料が入っていてとか、価格も書いて、写真まで撮って決裁をもらいに行きました。



 松下幸之助がずっと説明を聞いていて、最後に一言

「うまそうやな」

と言ったので、私も何気なく

「美味しいと思います」

と言ったのです。



 すると松下幸之助の顔が変わりました。

「君…、いま”思う”と言ったな。…食べたんか?」

とこう言うのです。

「いえ、食べてません…」

と言ったら

「なんで大事なお客さんに弁当を出すのに、自分で食べてへんのや?」

と叱られたのです。



「自分で実際に食べてみる。あ~うまい。分量もちょうどいい具合。これだったらきっと喜んでもらえる、と思って出す弁当は、弁当とともに君の心が伝わるんや。君、それが魂の入った仕事やで。君の仕事には魂がはいっていない」

と、こう言うのです。自分で実際に食べてみる。これが一次情報なのです。美味しいなと思う。これが一次情報なのです。

「すべてそういうレベルで仕事をしていかないと、仕事は上滑りしてしまう。そういうレベルで仕事をすればカネ以上の値打ちがでる」

と言って叱られたのです。【引用終わり】
 
 

恩師はこのエピソードを話すことで、私に一次情報の大切さを教えてくれました。自分の目で見て、耳で聞いて、肌で感じたことを信じる。それ以外の情報はすべて2次情報、3次情報になるので、判断材料にはしても、鵜呑みにはしないようにする。そのような判断基準で情報を整理していくことを心がけるようになりました。

今から10年前に、『日本の高齢化問題解決にとって、フィリピン人介護士が重要な役割を担う』という仮説を立てて、私はフィリピンにやって来ました。昨年の2019年に、ようやく外国人介護職が日本で働くことのできる、【特定技能ビザ】が新設され、フィリピン人介護士にも門戸が開かれました。しかし、来日の前に、日本政府が設定した介護試験に合格しなくてはなりません。その試験対策のクラスを、私が受け持っています。彼らは半年間という限られた期間の中で、日本語と日本式介護の勉強を行います。日本で働くことを夢見て、一生懸命に勉強をしている彼らの様子を間近で見ていて、私の仮説は正しいのではないかと考えています。それが、日本の介護現場で10年働き、フィリピンの教育現場で日本式介護を教えている、私の一次情報からの判断になります。

 

 

特定技能ビザによる外国人介護職受け入れについては、2次情報、3次情報から判断した人たちが、いろいろなことを言っています。情報が簡単に手に入る時代だからこそ、松下幸之助の仰るように、1次情報を丁寧に集めることが大切な時代になってきたなと感じています。恩師からのはなむけの言葉を忘れずに、自分の1次情報を信じて、発信していきます。

 

 

2020年、介護業界の開国

2020年、明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い致します。2020年は介護業界の開国の年になります。技能実習生、特定技能、介護留学などなど、さまざまな在留資格で外国人介護士が日本の施設で活躍することになるでしょう。

 

 

昨年、パキスタンの女性から一本のメールがありました。とても丁寧な日本語で、『日本で介護士として働きたいです、サポートしてもらえませんか』との内容です。私がフィリピン人介護士に対して、日本就労の支援をしていることをネットで見つけて連絡をしたようです。

 

『パキスタン』にいる人が、『フィリピン』にいる私に、『日本』で介護士として働く相談をしたのです。

 

この事実からみても、世界は待ったなしでボーダレス化しており、ネットやSNSを通して世界中の人々と繋がれる世の中になりました。この大変革を、困ったことと捉えるか、チャンスとして捉えるかで、その人のこれからの人生が変わっていくかと思います。私は、日本の介護業界にとってこの大変革は、ものすごいチャンスだと感じています。

 

そもそも、他国では外国人が自国の子供やお年寄りの面倒をみることはすごく当たり前なことなのです。ちなみに去年産まれた私の息子は、週6回フィリピンのベビーシッターさんにお世話になっています。言葉や文化の違いなどは大した問題ではなく、人としての信頼関係が構築ができていれば、お互いにとってメリットになります。

 

日本は良くも悪くも、そこそこ人口があったため自国内で経済が回り、また島国であるため人の移動が少ないという環境にありました。しかし、これからは『人』も『モノ』も『お金』もボーダレスに移動していきます。この流れは誰にも止められません。

 

介護業界の開国によって、思いもよらない『ハピネス』までも勢いよくまで日本に流れ込む、そんな予感がプンプンする2020年の始まりです!